今年に入ってからの新型コロナウイルス感染拡大を受け、人々の暮らしは一変しました。人の流れは止まり、社会活動や消費行動が鈍化するなか、賃貸市場はどうなっていくのでしょうか?

2019年(新型コロナ禍以前)の動向

まずは、これまでの賃貸市場の動向を確認してみましょう。
『日管協短観(2019年10月~2020年3月)』によると、2018年下期には順調に上昇傾向にあった成約件数や成約賃料のDI値*は、2019年下期になって全体としては低迷、広告反響や来店のDI値も全体的に下降傾向にあります。

≪* DI値(業況判断指数):前年よりも増加(≒良い)と感じている企業の割合から減少(≒悪い)と感じている企業の割合を引いたもの≫

成約賃料のDI値推移をみると、首都圏は平均ですべての部屋タイプが減少傾向にありますが、特に2LDK以上の下降幅が大きく、全国的にもファミリータイプの賃料は低下しています。一方関西圏は1R・1DKタイプの下降が顕著です。
とはいうものの、実は2017年と2018年を比較すると全国的に2018年にかなりのDI値の上昇があり、2019年はその反動で前年よりも悪くなったと感じている企業が増えたとも読み取れます。

この中で注目すべきは首都圏の成約賃料のDI値で、1R・1DKと2LDK以上が2017年を下回るまで低下しているのに対し、1LDK~2DKは下げ幅が小さく2017年に比べて依然として高い水準にあることです。賃料ダウンした割合は増えたものの、増加あるいは変化なしが9割以上となっています。
首都圏では1 LDK~2LDKに人気が集まっており、しかも一部には賃料を上げても需要が増している状況です。

 

ターゲット層を考える

不動産投資の成功のカギの1つは、ご自身の投資物件がどのような人たちをターゲットにしているかをしっかり把握しているかどうかです。

単身世帯の増加

ご存知のように、婚姻年齢が高くなっている、離婚率が上がっている、単身高齢者が増えていることから、今の日本は単身世帯が増加しています。この傾向は今後も変わりそうにないことから、単身世帯向けの賃貸市場が縮小することは考えにくいでしょう。

二人世帯・三人家族の増加

単身世帯と同様に増えているのが二人世帯と三人家族世帯です。
結婚後共稼ぎで子供をもうけない(DINKs(ディンクス):Double Income No Kids)時期が長くなっていること、高齢化により老夫婦世帯の増加、離婚によるひとり親世帯が増えていること、経済的な面からも二人目の子供に消極的になりつつある夫婦が多いことを考えれば、日本では二人、三人家族がスタンダードになってきています。

日本で働く外国人の増加

新型コロナで入国制限があるので日本で働く外国人も今年は簡単には増えそうにはないのですが、いずれにしても労働人口不足の日本においては外国人による労働力はもはや必要不可欠です。新型コロナウイルス騒動が落ち着けば、また日本で生活する外国人は増加するでしょう。

シェアリングエコノミーの普及

日本でもこの数年で様々な分野でシェアリングエコノミーが普及しました。自動車や自転車、ブランドバッグやアクセサリーのレンタルが当たり前になっているだけでなく、日常使いの洋服や靴までも所有しない若者が増えてきています。自分が所有する物を最低限にして、「今好きな物」を使いたいという暮らし方なのです。「家」についても「今の自分に合った家」に住み替えることを考える傾向があり、若者の間では賃貸派が多いようです。

このように考えると、賃貸の需要はまだまだ減ることはないでしょう。その中でも特に、最近は資材の高騰に加え新型コロナウイルスの影響で建設事業が停滞しているため新築物件の供給が減っていることから、今ある賃貸物件の市場を活用していく動きが見られます。

ただ、若い世代が好むエリアや高齢者・外国人が住みやすい街があるように、家族構成や年代、収入レベルによって必要とされる間取りや払える賃料がある程度限定されるため、物件エリアに応じたニーズを見誤らないことが大切です。

コロナ禍で変わる生活様式

この数カ月、新型コロナウイルスの影響で私たちの生活様式は大きく変化しました。
住宅事情でいえば、自宅でテレワークする人が増えたこともあり、間取りや家の中の動線をこれまで以上に意識するようになったことが挙げられるのではないでしょうか。

テレワークが賃貸市場に与える影響

テレワークが普及するなか、人々が都心離れするのではないかといわれていますが、実際にはそうとも言えず、今でも多くの若者は都心に住みたがっています。ところが現在の賃貸物件ではほとんどの場合仕事スペースがなく、自宅において仕事場を確保するのが難しいという話題をよく耳にします。
そこで、これからの賃貸市場では仕事スペースが確保された部屋や環境が注目されるようになるのではないでしょうか。
仕事部屋として1部屋とれなくても、ちょっとした工夫で間仕切りができるコーナースペースがあったり、家の中にスペースがとれなくてもすぐ近所にレンタルスペースがあれば、それらは賃貸広告の注目ポイントの1つになるでしょう。

コロナ対策がしやすい間取り

他にも新型コロナウイルスへの対策として、外から帰ってすぐに手洗いや着替えをしたり、外で使用した荷物をリビングや寝室に持ち込みたくないという人が増えています。玄関そばに洗面室を配置したり、玄関付近に荷物を置けるスペースを設ければ、コロナ対策がしやすくなります。

ターゲットのニーズに合った賃貸物件を

これからは、入居希望者のニーズがますます多様化していくでしょう。物件のエリアに多い家族構成、そのエリアに住む人たちが住まいに何を求めているか…?単純に便利なら良い、安ければ良いというものではないのです。
賃貸市場でよくいわれるのは「駅近」「築浅」ですが、今後はそれに限らず、アピールポイントが明確にあり物件エリアごとの細かなニーズに合致することが大切になってきます。それを押さえることができていれば、賃貸需要を取りこぼすことはないでしょう。