AI(人工知能)は今では多くの家電製品やサービスに利用されていますが、金融商品についてもAIやビッグデータなどの活用が進んでおり、金融(Finance)と技術(Technology)を組み合わせた「フィンテック」という言葉が当たり前になってきています。

今回ご紹介するAI投信とは、人工知能(AI)を利用した比較的新しいタイプの投資信託になります。AI投信のもつ特徴やメリット、デメリットについて解説していきます。

AI投信とはなにか?

AI投信とは、AI(人工知能)を利用してファンドに組み込む銘柄を分析・発掘・選択させ、そうして選ばれた銘柄を配分し、ファンドを組成して運用する投資信託です。AIは過去の膨大なマーケット情報や企業の財務情報といったビッグデータとも呼ばれる大量のデータを取り込み、ファンド運用会社によって予め組み込まれた条件などに従い、短時間で多面的に銘柄分析することができます。

投資信託には運用スタイルによって大きく「パッシブ型」と「アクティブ型」に分けられます。パッシブ型とは、S&P500やNYダウ、Nikkei225などマーケットの市場平均となる株価指数並みの成長を目指す投資信託になります。一方のアクティブ型は、市場平均を上回るファンドの成長を目指すタイプの投資信託で、AI投信はこのアクティブ型の投資信託に分類されます。

アクティブ型の場合、運用成果はファンド・マネージャーの銘柄選定能力や売買タイミング次第で大きく異なってきます。ファンドに組み込まれる銘柄は定期的に見直され、売買を通じて入れ替えられていきます。その銘柄選定は過去のマーケット情報や個別企業の銘柄分析などを通じて、まさにファンド・マネージャーの目利きで行われます。

AI投信はAIのもつビッグデータと呼ばれる大量の情報を分析する能力を最大限活かし、人間が行なってきた銘柄選定や売買判断をファンド・マネージャーの代わりにおこなって運用する商品です。また、AI投信の中にはファンドに組み込む銘柄の発掘だけをAIに任せ、最終的にどの銘柄でファンドを運用するかの判断は人間のファンド・マネージャーが行なっているというファンドもあります。

尚、「AI投信」と呼ばれる商品の中には、AIの開発やAI活用の活用を通じて成長すると期待されているAI関連のハイテク企業銘柄だけ集めて単に運用している投資信託もあります。今回ご紹介しているAIの技術を活用して銘柄選定から運用までを行っている投資信託とは全く別の意味の商品になりますので、ご注意ください。

AI投信のメリットとデメリット

AI投信にはAIの技術を活用することで既存の投資信託には無かったようなメリットもあります。しかし、一方で注意すべきデメリットもありますので、順に見ていきましょう。

AI投信のメリット:常に冷静な投資判断が可能

AI投信のメリットは人間の感情や恐怖心にも全く影響されずに投資判断が行える点にあります。投資のプロとして経験を積んできたファンド・マネージャーであっても人間である以上、時に運用成果へのプレッシャーは避けられないものであり、相場への恐怖心と無縁ではいられません。

そのためマーケットの動きを読み誤ったり、売却すべきタイミングで躊躇したり、仕掛けるべきタイミングでチャンスを逃してしまうということもあります。AIの場合、そのような場面でも自らの学習能力を活かし、マーケットデータを分析しながら機械的に淡々と判断していくことができます。

AI投信のメリット:保有コストの安さ

投資信託には信託報酬のほか、購入時手数料や監査報酬といった手数料がかかるのが一般的ですが、AI投信の中には手数料を運用報酬のみとしているものもあり、選択する商品や運用方法によっては従来の投資信託よりもコストを低く抑える事が可能です。

AI投信のデメリット:過去にない相場環境の変化への判断が難しい

AI投信のデメリットを挙げるとすれば、過去に見られなかったような相場環境の大きな変化には上手く対応できないという点が挙げられるでしょう。

人間には、理屈では説明がつかないような「第六感」と呼ばれる能力があります。データでは正しく説明できないものの、何とくなこの先も運用ポジションを保有し続けると危険であると察知するような能力です。 AI投信ではあくまでAIによるデータ分析や特定のアルゴリズムと呼ばれるプログラミングを基に判断しており、人間のもつような第六感で危険を察知して回避するという投資行動を取ることはできません。そのため、損失が膨らんでもそのまま同じような運用スタイルを継続し、相場の変化についていけないという可能性が考えられます。

AI投信のデメリット:パッシブ型を下回るパフォーマンス

アクティブ型ファンドの多くは一部の例外を除けば、保有コストの安いパッシブ型ほどの運用成果を出せていないというのが、金融業界共通の見立てです。残念ながらAI投信もその多くが同じような結果となっており、パッシブ型を下回っています。

AI投信の現状はどうなっているのか?

日本国内ではアメリカほどではありませんが、AI投信やそれに関連する商品が多数販売されています。そのほとんどが株式ファンドとなっており、商品数自体は増加傾向にあります。しかし、2019年度末までの状況を見る限り、いずれの商品もパッシブ型と呼ばれているインデックスファンドを上回るどころか、むしろ下回っています。デメリットのところでも指摘したように、AI投信の運用成績については多くの従来型のアクティブ型とほぼ似たような状況にあるといえるでしょう。AI投信が本格的に運用されるようになってからまだ日が浅いことを考えると、今後の改良により、運用成績の向上に期待したいところです。

まとめ

今回お伝えしたように、AI投信は人間の判断ではなく、大量データ分析が瞬時で可能なAIの技術を活用した投資商品です。フィンテックの世界における技術革新のスピードは速く、今後、現在課題となっているデメリットを克服した商品が出てくることも期待できるでしょう。いずれにせよ、メリット・デメリットをよく比較・検討した上で、投資判断をすることが重要です。